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ケッテンのホーンボタン

全国1000人?のケッテンレストア日記読者の皆様に朗報です♪

いよいよ、自分のケッテンクラートレストア奮闘記がは制作開始です。入手の経緯から、部品の手配、入手などのエピソード、実際のレストア作業、その過程で知りえた情報など、面白おかしく綴ってみたいと思います。
 本日はその試作品を味見がてらご賞味ください。かなりマニアックな味付けになっておりますのでご堪能くださいませ。

IMG_1565.jpg
入手した時点で、明らかに農耕機から流用された怪しいスロットルがついていました。ハンドルのグリップも農機具からの流用で安っぽいです。問題はそのスロットルが付いている内側にある500円硬貨くらいの円盤。何かの取り付け基部ですが、何が付いて居たのか?それを探るには長い、長~い道のりが必要だったのです。
 ケッテンクラートと言えば、マニアでなくとも知っているメジャーなドイツ軍車両だと思うのですが、戦車と違って一車種について各出版社から本が出ているなんて恵まれた環境ではありません。海外洋書で3種類ほど入手可能な書籍がありますが、ケッテンクラートの製造年による細部の変化を解説したものはなく、そもそも後期型にあたる車両は、戦場写真でも3枚ほどしか確認できません!!ドイツ軍の車両や兵器は1944年に製造数がピークを迎えるものが多く、ケッテンクラートも例外ではありません。
'40年 約140台
'41年 約420台
'42年 約970台
'43年 約2500台
'44年 約4400台
'45年 約400台
 ご覧のように総生産数8800台あまりの内、半数が1944年に生産されているにもかかわらず、現存する戦場写真は43年までの前期型ばかりです。戦後にも500台ほどがNSU社で生産された事実もあり、80年代から90年代に出版された書籍では現存する後期型を戦後生産タイプと解説されることも多く、自分も入手した当初は戦後生産タイプだと勝手に思いこみ、メジャーな前期型へ改造することを検討していました。しかし、そのための資料集めと部品手配の過程で生産年度による細部の変化に気が付いて行く訳ですら、かかった手間と入手した前期型フロントフォークなどの部品を含めて無駄だった気はしません。
 ここからが本日の本題であるホーンスイッチのお話になります。軍の呼称は戦中を通じて変わることはありませんので、前期型や後期型といった呼び方はあくまで識別のためマニアが便宜上使うものです。ケッテンクラートの場合、1943年の末ごろからフロントフォークが強化型に変更され、1944年の早い時期にヘッドライトが廃止されます。ヘッドライトが廃止された以降のものをここでは後期型と呼びます。

kklampe.gif
 この図は、ケッテンの整備解説書にあるヘッドライトの図です。ご覧のようにホーンスイッチとライトのハイビーム・ロービームの切り替えが一つのスイッチによって出来るようになっています。当時のマニュアル写真やドイツ週刊ニュースの映像でこのスイッチは確認できます。その形状から明らかに前述の円盤型基部には取り付け出来ません。

IMG_0783.jpg
 この写真は、自分が入手したBMWR75やZENDAPPKS750サイドカー用の同じ機能を持たスイッチです。戦後レストア時に入手が可能なので、現存する前期型はこのスイッチが付いているものが多いです。自分もヘッドライトとこのスイッチをつけるつもりで準備を進めていたのです。

066.jpg
 しかし、後期型はヘッドライトが工場出荷時から付いていなかったという事実に気が付くと疑問が出てきます。ホーンスイッチはどうなったんだ?と。そんな疑問を持ちながら何度も眺めたはずの海外サイトと見れば、ご覧のようにスイッチだけのホーンボタンが付いた後期型の写真がしっかりあるのです。知っていれば気が付き、知らなければ同じ写真からも情報は何も得られないという良い見本ですね。

Snimek_934.jpg
 そうなれば、後期型のホーンスイッチをリプロダクションでも良いので入手したくなるが人情というもの。部品供給先へ問い合わせしたところ、一般に存在すら知られていない後期型スイッチは需要もないようで「リプロ部品は存在しない、気長に本物(当時のオリジナル)を探せ」とチェコ共和国からの冷たいメール。実はこの時点で、問題の500円硬貨くらいの円盤が後期型スイッチの取りつけ基部だと判明したのですが、戦後に誰かが何かのために付けたのだろう、と軽く考えて外したまま完成させていたのです。
 唯一の救いは、外した基部部品は捨てずにとってあったことくらいです。まあ、車検をとる訳でもないので、スイッチも見つからないまま2年が経過しましたが、このたびチェコからのメールで売り物が出たとのこと。その売り物がこの写真というわけです。金額は100ユーロ(約13,000円)、安いと思うか、高いと思うかはその人の価値観次第ですが、自分は即決で購入を決断しました♪
 こうして懸案の円盤基部部品は、スイッチ到着と同時に本体へ再取り付けされる事になりそうです。

・・・と、こんな与太話をざっと120ページ分ほどお読みになりたい方は、応援コメントとよろしく頼みます
     

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いつも楽しみにしています。

過去のHPで知り、静岡フリマやジープ機能美展で拝見させていただきまして有難うございます。
まだ動く姿を見たことがありませんが、次回のフリにも展示されるとのことなので搬入時のチャンスを逃さず動画に残せればと思っています。

D2さま>
書き込みありがとうございます。フリマは決定ではありませんが、おそらく展示になると思います。それではご要望にお応えして、意味もなく会場の外を走り回る努力をします(笑)

小林@御殿場 様

>意味もなく会場の外を走り回る努力をします。
どうも有難うございます。3月がとっても楽しみです。
もしフリマに展示の際は、動くその姿をこの目にしっかり焼き付けさせていただきます。

Re: タイトルなし

会場からクレームが付かない程度にがんばりますv-81

製造数

生産台数の少なさに驚きです。
レストア日記の続き、期待しています!

Flitzさま>
少ないですか?こんな中途半端な車両を9000台近くも生産したことに驚きを感じますが・・・v-399
先ほど、チェコに部品代を送金しました♪

いつも楽しく見させていただいてます。初めてコメントします。
前々から気になってたのですが、ケッテンクラートって日本の法律では免許区分と車両区分っていうのはどのようになるのでしょう?
トライクか、はては小型特殊?それとも大型特殊?考えるだけでも頭がこんがらかってしまいます(笑)

Re: タイトルなし

小笠さま>
コメントありがとうございます。そもそも後期型はヘッドライトが無いので、登録する気もないのですが、灯火類を付けた前提でお話します。ナンバーは小型特殊、しかし排気量が1500ccですので運転には大型特殊免許が必要ということのようです。万が一、前期型を入手することがあれば、間違いなくナンバーを取得して公道デビューをしたいところですが、現状ではまったく予定がありません。

小林@御殿場様
小型特殊になるんですか!すっきりした(笑)

何年か前に規制緩和されて排気量が1500ccを超えてましても小型特殊登録で免許区分も小型特殊になりますよ。
ただ、最高時速が小型特殊が時速15km未満の場合ですが。その場合は灯火類はヘッドライトのみで良かった気がします。

Re: タイトルなし

>その場合は灯火類はヘッドライトのみで良かった気がします。

そのヘッドライトが付いてないのですよ・・・1943年末ごろからケッテンのヘッドライトは工場出荷時から付いていませんv-12
しかし、1500cc超えでも小型特殊免許でOKと言うのはうれしいですね。前期型の入手を企みますか・・・v-39

もっと初期から・・・

いや、もっと初期から数が作られていると思っていたので。

43年、44年の数字がすごいですね。
これを作る手間で別の車両を作った方が良かったのでは?と考えてしまう軍事素人(笑)

Re: もっと初期から・・・

> いや、もっと初期から数が作られていると思っていたので。

実際には1940年から41年にかけて増加試作車500台が作られ、ロシア戦線で大活躍したので量産化になったようです。42年にも1000台弱しか作られてません。ここいらあたりの流れも現在執筆中です。

別の車両を作るような合理的な行政システムだったら、現在私たちを楽しましてくれる数々のヘンテコ機械は日の目を見ないで企画だけで終わっちゃったでしょうねv-12

応援します🎵

タミヤのMM作った事がある人なら一度は作ったであろうケッテンクラートを日本でレストアしようとする事に敬服致しました。
無事完成する事を心よりお祈り申し上げます。
プロフィール

小林@御殿場

Author:小林@御殿場
静岡県御殿場市在住
株式会社カマド
代表取締役です。

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